〔ぢしばりの蔓〕
一九二七、八、二〇、
……ぢしばりの蔓……
もう働くな
働くことが却って卑怯なときもある
夜明けの雷雨が
おれの教へた稲をあちこち倒したために
こんなにめちゃくちゃはたらいて
不安をまぎらさうとしてゐるのだ
……あゝけれども またあたらしく
西には黒い死の群像が浮きあがる
春には春には
それは明るい恋愛自身だったでないか……
さあ
帰ってすっかりぬれる支度をし
切できちっと頭を縄(しば)って出て
青ざめて
こはばったたくさんの顔に
一人づつぶっつかって
火のついたやうにはげましてあるけ
穫れない分は辨償すると答へてあるけ
死んでとれる保険金をその人たちにぶっつけてあるけ