一〇八八

                  一九二七、八、二〇、

   

   もう働くな

   レーキを棄てろ

   働くことのむしろ卑怯なときがある

   この半月の曇天と

   今朝のはげしい雷雨のために

   おれの肥料を設計した

   稲が次々倒れたので

   こんなにめちゃめちゃはたらいて

   無理に不安をまぎらかさうとしてるのだ

   卑しいことだ

     ……けれどもあゝまたあたらしく

       西には黒い死の群像が湧きあがる

       春には春には

       それは恋愛自身とさへも

       考へられてゐたではないか……

   さあ一ぺん帰って測候所へ電話をかけ

   すっかりぬれる支度をし

   頭を堅く縄って出て

   青ざめてこわばったたくさんの顔に

   一人づつぶっつかって

   火のついたやうにはげまして行け

   どんな手段を用ひても

   辨償すると答へてあるけ

   

 


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