萓もたほれ稲もたほれて
野はらはいちめんとむらふやうな水けむり
そこにひとり
ちょこんと縁に座って
そらのけはひをきいてゐる
……額はきざみ
眼はうつろ……
……どの松ばやしも雲にすれすれ
幾重ものつゝみは灰いろにあふれて
そこらはいちめん
たゞ桃いろの稲づまばかり
あけがたと夜に草を刈り
冬も手織の麻を着て
せわしくすぎた七十年を
嘲けりながら彰表するといったふう
白くながれる雲の川
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