野の師父

   

   稲も萓もみんなつぎつぎ倒れるなかで

   ひとりきちんと椽にすはり

   空の、けはひをきいてゐる

     ……額はきざみ その眼はうつろ

       夜とあけがたに草を刈り

       冬も手織の麻を着て

       七十年を数えたひとを

       またいなづまが洗って過ぎる……

   松や楊のはやしには

   雲がすれすれ

   幾層ものつゝみの水は

   灰いろをしてあふれてゐる

 

 


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