野の師父

   

   稲も萓もみんな倒れて、からの水車はごろごろひとりまわってゐた

   わたくしの設計した稲も

   次次に倒れはじめてゐた

   けれどもどうだこの雷鳴と黒雲のなかで

   椽に正しくすはり

   虚心に空の野原との、けはひをきいてゐることは

   まさしく施無畏の像である。

 

 

   松や楊の林には

   幾すじ雲の尾がなびき

   幾層ものつゝみの水は

   灰いろをしてあふれてゐます

 

 


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