陰気なひば垣のかげだの
倒れかかった稲のあひだを
刺や(数文字不明)眼や
気の毒さうに正視を避ける人たちに
迎へられたりわかれたりして
結局おれの行くさきは
地べたについたあのまっ黒な雲のなかだ
……ここの野原の土から生れ
そこの野原の(三字不明)に老いて
いま苔深くうづもれるもの……
またいなづまが
松の林をぎらっとなで
みちの粘土をうすあかく照らして
稲がまたしんとくらくなれば
あっちもこっちもきちがひみたひに
ごろごろまはるからの水車だ
……そこの野原の土から生えて
そこの野原に朽ちたもの……
念仏供養の石塔に
ハックニー馬のしっぽのやうな
青い柳が一本立つ