二時がこんなにくらいのは

   時計も雨でいっぱいなのか

   本街道をはなれてからは

   みちは陰気なひば垣のかげや

   倒れかかった稲のあひだを

   縫ってここまで来たが

     ……たくさんの眼は

       あるひは刺すやうにひかったり

       気の毒さうにこっちの瞳を避けたりした……

   あのまっ黒な地べたについた

   北のけはしい雨ぐもだ

     ……ここの野原の土から生えて

       ここの野原の雨にまぶれ

       いままっ青な苔に埋もれるもの……

   西からはまたいなびかり

   もくもくした松の林の上を

   うすあかくぎらっとなでて行きすぎる

   みちも一瞬うすあかくなる

   まだ雷が鳴りださないうちに

   あっちもこっちもきちがひみたひに

   ごろごろまはるからの水車だ

     ……ここの野原の土から生えて

       ここの野原に朽ちたもの……

   ハックニー馬のしっぽのやうな

   青い柳が一本立つ

   

 


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