一〇五八

     電車

                  一九二七、五、九、

   

   銀のモナドのちらばるそらと

   逞ましい村長の肩

     ……べルを鳴らしてカーヴを切る

       べルといふより小さな銅鑼だ……

   はんの木立は東邦風に

   水路のヘりにならんで立つ

   

   はんの木立の向ふの方で

   黒衣のこども燐酸を播く

     ……ガンガン鳴らして飛ばして行く……

   田を鋤く馬と白いシャツ

   胆礬いろの山の尾根

   

   町へ出て行く小さくやさしい貴女たちの群

    (今日はどこらへおいでです)

    (はあ組合へ金策に)

   さあっと曇る村長の顔

     ……うしろを過ぎるひばの木二本……

   風が行ってしまった池のやうに

   いま晴れわたる村長の顔

     ……ベルを鳴らして一さん奔る……

       栗の林の向ふの方で

       ざぶざぶ水をわたる音

       それから何か光など

       崩れるやうなわらひ声

   

 


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