電車
一九二七、五、九、
銀のモナドのちらばるそらと
逞ましい村長の肩
……べルを鳴らしてカーヴを切る
べルといふより小さな銅鑼だ……
はんの木立は東邦風に
水路のヘりにならんで立つ
はんの木立の向ふの方で
黒衣のこども燐酸を播く
……ガンガン鳴らして飛ばして行く……
田を鋤く馬と白いシャツ
胆礬いろの山の尾根
町へ出て行くおかみさんたち
さあっと曇る村長の顔
……うしろを過ぎるひばの木二本……
風が行ってしまった池のやうに
いま晴れわたる村長の顔
……ベルを鳴らして一さん奔る……
栗の林の向ふの方で
ざぶざぶ水をわたる音
それから何か光など
崩れるやうなわらひ声