〔うすく濁った浅葱の水が〕
一九二七、四、一八、
うすく濁った浅葱の水が
けむりのなかをながれてゐる
早池峰は四月にはいってから
二度雪が消えて二度雪が降り
いまあはあはと土耳古玉(タキス)のそらにうかんでゐる
そのいたゞきに
二すじ翔ける、
うるんだ雲のかたまりに
基督教徒だといふあの女の
サラーに属する女(ひと)たちの
なにかふしぎなかんがへが
ぼんやりとしてうつってゐる
それは信仰と奸詐との
ふしぎな複合体とも見え
まことにそれは
山の啓示とも見え
畢竟かくれてゐたこっちの感じを
その雲をたよりに読むのである