青じろい天椀のこっちに

   まっしろに雪をかぶって

   早池峯山がたってゐる

   白くうるんだ二すじの雲が

   そのいたゞきを擦めてゐる

   雲はぼんやりふしぎなものをうつしてゐる

   誰かサラーに属する女(ひと)

   いまあの雲を見てゐるのだ

   それは北西の野原のなかのひとところから

   信仰と譎詐とのふしぎなモザイクになって

   白くその雲にうつってゐる

    (いましがわれをみるごとく

     そのひといましわれをみる

     みなるまことはさとれども

     みのたくらみはしりがたし)

     ……さう

       信仰と譎詐との混合体が

       時に白玉を擬ひ得る

       その混合体はたゞ

       よりよい生活(くらし)を考へる……

   信仰をさへ装はねばならぬ

   よりよい生のこのねがひを

   どうしてひとは悟らないかと

   をはりにぼんやりうらみながら

   雲のおもひは消えうせる

   うすくにごった葱いろの水が

   けむりのなかをながれてゐる

   

 


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