一九二七、四、一八、
バケツをもって岸辺に来れば
浅黄いろしてうすく濁った春の水は
ひかりのなかをながれてゐるし
楊の花芽はぴしゃぴしゃ水をたゝいてゐる
冬のはじめの鉄いろの晩
はだかの赤児が捨てられた
その船つきの石原が
いまむらさきにかすんでゐる
むかしはもっと公然さうされて
狸や狐の集った
向ふの岸のばらやぶも
いまは茶いろにけむってゐる
早池峰は四月にはいってから
二度雪が消えて二度雪が降り
いまあはあはと土耳古玉(タキス)のそらにうかんでゐる
そのいたゞきに二すじ翔ける
うるんだ雲のかたまりに
俸給生活者(サラー)に属する人たちの
なにかふしぎなかんがへが
ぼんやりとしてうつってゐる