一〇二八

     酒買船

                  一九二七、四、五、

   

   四斗の樽を五つもつけて

   南京袋で帆をはって

   ねむさや風に逆って

   山の鉛が溶けて来る、

   重いいっぱいの流れを溯り

   北の方の

   泣きだしたいやうな雲の下へ

   船はのろのろのぼって行く

   

   みなで三人乗ってゐる

   一人はともに膝をかゝえて座ってゐるし

   二人はじろじろこっちを見ながら立ってゐる

   じつにうまくないそのつら

   じぶんだけせいぜいほうたうをして

   それでも不満でしかたないといふ顔付きだ

   

 


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