一〇二八

     

                  一九二七、四、五、

   

   じつに古くさい南京袋で帆をはって

   ねむさや風に逆って

   山の鉛が溶けて来た重いいっぱいの流れを溯って

   いったいどこへ行く船か

   

   男が三人乗ってゐる

   じつにうまくないそのつらの風

   じぶんだけせいぜいほうたうをして

   それでも不満でしかたないといふ顔付きだ

   樽を三つも載せたのは

   おほかた酒を買ひに行くのだ

   今夜もみんな集って

   八十円ほどがぶがぶやらうといふのだらう

   もちろん米は潰して酒にできやうが

   ひるまの雨は夜には針にもみぞれにもなるぞ

   

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→