実験室小景

　　　　　　　　　　　　　　　　　　一九二七、二、

　　　　　　こんなところにきみは居るのか

　　　　　　暖炉はひとりでうなってゐるし

　　　　　　黄いろな時計はびっこをひきひきうごいてゐる

　　　　　　　　ああ　さうだよ　まあ掛けたまへ

　　　　　　　　苛性カリでも一ぱい呑むか

　　　　　　強烈だねえ

　　　　　　　　そんならきみ(一字不明)むりに(数文字不明)してみたまへ

　　　雪の反射とポプラの梢

　　　そらを行くのはオパリンな雲

　　　あるいはこまかな氷のかけら……

　　　　　　ガラスのオボーがたくさんあ(以下不明)

　　　　　　　　あいつは(数文字不明)を検出する

　　　　　　　　(数文字不明)だよ

　　　　　　ごく透明な　心臓ですな

　　　　　　　　(一行不明)

　　　　　　　　そいつは加里球(ポタシユバルヴ)だよ

　　　風がふけば

　　　またひとがあるけば

　　　棚にならんだ目盛(ミージヤーリング)フラスコの

　　　そのいちいちの色異なった溶液が

　　　めいめいきれいにひかってゆれる

　　　　　　塩酸比重一ポイント零二

　　　　　　右はタンニン定量用か

　　　　　　　　うろうろあるいて

　　　　　　　　(数文字不明)さうだねえ

　　　　　　　　(数文字不明)だらう

　　　(一行不明)

　　　　田園交響楽(シンホニーパストラル)の(三字不明)度を測定する

　　　　(三字不明)の青黒い試薬な(以下不明)

　　　　　　　　　あゝそ(数文字不明)もう(三字不明)してゐるよ

　　　ぎらぎら砕けるポプラの枝と雲の影