饗宴
一九二六、九、三、
酸っぱい胡瓜をぽくぽく噛んで
みんなは酒を飲んでゐる
……土橋は曇りの午前にできて
いまうら青い榾のけむりは
稲いちめんに這ひかゝり
そのせきぶちの杉や楢には
雨がどしゃどしゃ注いでゐる……
みんなは地主や賦役に出ない人たちから
集めた酒を飲んでゐる
……われにもあらず
ぼんやり稲の種類を云ふ
こゝは天山北路であるか……
さっき十ぺん
あの赤砂利をかつがせられた
顔のむくんだ弱さうな子が
みんなのうしろの板の間で
座って素麺(むぎ)をたべてゐる
(紫雲英(ハナコ)植れば米とれるてが
藁ばりとったて間に合ぁなじゃ)
こどもはむぎを食ふのをやめて
ちらっとこっちをぬすみみる