饗宴
一九二六、九、三、
みんなは酒を飲んでゐる
……土橋は曇りの午前にできて
いまうら青い榾のけむりと雨の脚……
みんなは地主や賦役に出ない人たちから
集めた酒を飲んでゐる
おれはぼんやり
稲の種類を云ってゐる
一人の子どもの百姓が
みんなのうしろの板の間で
座って素麺(むぎ)をたべてゐる
からだ以上の仕事のために
顔も蒼ざめむくんでゐる
いまわたくしをぬすみみる
瞳よ闇夜の二つの星のやうに燃えて帰るのは
わたくしが酒を呑まないのに安心したのか
それとも村がまもなく明るくなるといふのか
あゝわたくしもきみとひとしく
はげしい疲れや屈辱のなかで
なにかあてなく向ふを望むだけなのに