七三四

     〔青いけむりで唐黍を焼き〕

                  一九二六、八、二七、

   

   青いけむりで唐黍を焼き

   ポンデローザも皿に盛って

   若杉のほずゑのchrysocollaを見れば

   たのしく豊かな朝餐な筈であるのに

   こんなにも落ち着かないのは

   今日も川ばたの荒れた畑の切り返しが

   胸いっぱいにあるためらしい

     ……エナメルの雲鳥の声……

   強いてもひとつ

   ふさふさ紅いたうもろこしの毛をもぎり

   その水いろの莢をむけば

   熱く苦しいその仕事が

   百年前の幽かなことのやうでもある

   

 


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