発電所
一九二五、四、二、
鈍った雪をあちこち載せる
鉄やギャブロの峯の脚
二十日の月の錫のあかりを
わづかに赤い落水管と
ガラスづくりの発電室と
……また余水吐の青じろい滝……
くろい蝸牛水車(スネールタービン)で
早くも春の雷気を鳴らし
鞘翅発電機(ダイナモコレオプテラ)をもって
愴たる夜中のねむけをふるはせ
むら気な十の電圧計や
もっと多情な電流計で
鉛直フズリナ配電盤に
交通地図の模型をつくり
大トランスの六つから
三万ボルトのけいれんを
塔の初号に連結すれば
幾列の清冽な電燈は
青じろい風や川をわたり
まっ黒な工場の夜の屋根から
赤い傘、火花の雲を噴きあげる