旅程幻想
一九二五、一、八、
海岸に沿ひ
いくつも峠を越えて
ひとりここまで来たのだけれども
いまこの荒れた河原の砂にまどろめば、
たしかしまひの硅板岩の峠の上で
ひのきづくりの白い扉(と)を
閉ぢなかったか或るひはわざと横をまはって来たらしく
そこの光ってつめたいそらや
やどり木のある栗の木なども眼にうかぶ
いま川上の黒雲と
つめたい日射しの格子のなかで
かすかに雷が鳴ってゐて
みちは南の地平まで
はてない割木の柵をつらねる
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