一九二四、一〇、五、
祀られざるも神には神の身土があると
あざけるやうなうつろな声で
さう云ったのはいったい誰だ
……雪をはらんだつめたい雨が
闇をぴしぴし縫ってゐる……
まことの道は
誰が云ったの行ったの
さういふ風のものでない
祭祀の有無を是非するならば
卑賤の神のその名にさへもふさはぬと
応へたものはいったい何だ
……ときどき遠いわだちの跡で
水がかすかにひかるのは
東に畳む夜中の雲の
わづかに青い燐光による……
(この間何行か不明)
……くろく沈んだ並木のはてで
見えるともない遠くの町が
ぼんやり赤い火照りをあげる……