三一三

                  一九二四、一〇、五、

   

   祀られざるも神には神の身土があると

   あざけるやうなうつろな声で

   さう云ったのはいったい誰だ

     ……雪をはらんだつめたい雨が

       闇をぴしぴし縫ってゐる……

   まことの道は

   誰が云ったの行ったの

   さういふ風のものでない

   祭祀の有無を是非するならば

   卑賤の神のその名にさへもふさはぬと

   応へたものはいったい何だ

     ……ときどき遠いわだちの跡で

       水がかすかにひかるのは

       東に畳む夜中の雲の

       わづかに青い燐光による……

   (この間何行か不明)

     ……くろく沈んだ並木のはてで

       見えるともない遠くの町が

       ぼんやり赤い火照りをあげる……

 

 


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