一三三

     島祠

                  一九二四、五、二三、

   

   うす日の底の三稜島は

   樹でいっぱいに飾られる

   パリスグリンの色丹松や

   緑礬いろのとゞまつねずこ

   また水際にはあらたな銅で被はれた

   巨きな枯れたいたやもあって

   風のながれとねむりによって

   みなさわやかに酸化されまた還元される

       それは地球の気層の奥の

       ひとつの珪化園である

   海はもとより水銀で

   たくさんのかゞやかな鉄針は

   水平線に並行にうかび

   ことにも繁く島の左右にあつまれば

   鷗の声もなかばは暗む

       そこが島でもなかったとき

       そこが陸でもなかったとき

   鱗をつけたやさしい妻と

   かってあすこにわたしは居た

 

 


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