一二三

     

                  一九二四、五、二二、

   

   いちにちいっぱいよもぎのなかにはたらいて

   馬鈴薯のやうにくさりかけた馬は

   あかるくそそぐ夕陽の汁を

   食塩の結晶したばさばさの頭に感じながら

   はたけのヘりの熊笹を

   ぼりぼりぼりぼり食ってゐた

   それから青い晩が来て

   やうやく厩に帰った馬は

   高圧線にかかったやうに

   にはかにばたばた云ひだした

   馬は次の日冷たくなった

   みんなは松の林の裏へ

   巨きな穴をこしらえて

   馬の四つの脚をまげ

   そこへそろそろおろしてやった

   がっくり垂れた頭の上へ

   ぼろぼろ土を落してやって

   みんなもぼろぼろ泣いてゐた

 

 


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