一九二四、五、八、
日脚がぼうとひろがれば
つめたい西の風も吹き
黒くいでたつ村娘(むすめ)が二人
接骨木藪をまはってくる
けらを着 縄(な)で胸をしぼって
睡蓮の花のやうにわらひながら
ふたりがこっちへあるいてくる
その蓋のある小さな手桶は
けふははたけへのみ水を入れて来たのだ
ある日は青い蓴菜を入れ
欠けた巨きな椀を泛べて
朝がこれより爽やかなとき
町へ売りにも来たりする
赤い漆の小さな桶だ
めいめい鍬を二梃づつ
けらにしばってゐるものだから
この人たちは
鳥の踊り(フォーゲルタンツ)の舞手とも見える
そんなら風よ
おまへがいつか、ステップ地方で歌ったやうに、
今日はいちにち、
このひとたちのはたらくそばでふるえてくれ、
今日はいちにち風よたのしいおまへのことばを
この人たちにさゝやいてくれ