有明
一九二四、四、二〇、
あけがたになり
風のモナドがひしめき
東もけむりだしたので
月は崇厳なパンの木の実にかはり
その香気もまたよく凍らされて
はなやかに錫いろのそらにかゝれば
白い横雲の上には
ほろびた古い山彙の像が
ねづみいろしてあやしくうかび
青くかすんだ野原には
アークライトのまたたきや
またまちなみの氷燈の列
そこには商工立国論者
有吉知事も横たはり
大臣級の古学士
葛校長もねむってゐる
……滅する最后の爬虫の種族……
やぶうぐひすがしきりになき
残りの雪があえかにひかる