七三

     有明

                  一九二四、四、二〇、

   

   あけがたになり

   風のモナドがひしめき

   東もけむりだしたので

   月は崇厳なパンの木の実にかはり

   その香気もまたよく凍らされて

   はなやかに錫いろのそらにかゝれば

   白い横雲の上には

   ほろびた古い山彙の像が

   ねづみいろしてあやしくうかび

   青くかすんだ野原には

   アークライトのまたたきや

   またまちなみの氷燈の列

   そこには商工立国論者

   有吉知事も横たはり

   大臣級の古学士

   葛校長もねむってゐる

      ……滅する最后の爬虫の種族……

   やぶうぐひすがしきりになき

   残りの雪があえかにひかる

 

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→

<外山詩群>へ→