四〇

     

                  一九二四、四、六、

   

   水いろの天の下

   高原の雪の反射のなかを

   風がすきとほって吹いてゐる

   茶いろに黝んだからまつの列が

   めいめいにみなうごいてゐる

   烏が一羽菫外線に灼けながら

   その一本の異状に延びた心にとまって

   ずゐぶん古い水いろの夢をおもひださうとあせってゐる

   風がどんどん通って行けば

   木はたよりなくぐらぐらゆれて

   烏は一つのボートのやうに

     ……烏もわざとゆすってゐる……

   冬のかげらふの波に漂ふ

   にもかかはらずあちこち雪の彫刻が

   あんまりひっそりしすぎるのだ

 

 


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