一八

     人首町

                  一九二四、三、二五、

   

   丘のはざまのいっぽん町にあさひがふり

   雪や雑木があさましいまで光ってゐる

     ……丘には杉の林もあれば

       黝い小さな鳥居もある……

   広田湾から十八里

   水沢へ七里の道が

   けさうつくしく凍ってゐて

   藻類の行商人や

   税務署の濁密係り

   みな藍靛の影を引いて

   つぎつぎ町を出てくれば

   遠い馬橇の鈴もふるえる

   まっしろな五輪峠のいたゞきで

   鉛の雲が湧きまた翔け

   南につゞく種山ヶ原のなだらは

   渦巻くひかりの霧でいっぱい

     ……あゝ朝の紺外套のかなしさ……

   つめたい風の合間から

   ひばりの声も聞えてくるし

   やどり木のまりには艸いろのもあって

   その梢から落ちるやうに飛ぶ鳥もある

 

 


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