人首町
一九二四、三、二五、
丘のはざまのいっぽん町にあさひがふり
雪や雑木があさましいまで光ってゐる
……丘には杉の林もあれば
黝い小さな鳥居もある……
広田湾から十八里
水沢へ七里の道が
けさうつくしく凍ってゐて
藻類の行商人や
税務署の濁密係り
みな藍靛の影を引いて
つぎつぎ町を出てくれば
遠い馬橇の鈴もふるえる
まっしろな五輪峠のいたゞきで
鉛の雲が湧きまた翔け
南につゞく種山ヶ原のなだらは
渦巻くひかりの霧でいっぱい
……あゝ朝の紺外套のかなしさ……
つめたい風の合間から
ひばりの声も聞えてくるし
やどり木のまりには艸いろのもあって
その梢から落ちるやうに飛ぶ鳥もある