〔この前の部分欠如〕

   すきとほってうすらつめたく

   シトリンの天と浅黄の山と

   青々つづく稲の氈

   岩手県のなかへ帰って来た

   電燈はみなダアリャの花に咲き

   泳ぐやうにしてその灯のしたにひるがへる雀も

   みんなわたくしには

   理解し楽しいものばかりです

   じつにわたくしは

   上っ葉枯れした

   宮城県の

   干拓地方の

   みぢかい苗や

   麦もざくざく黄いろにみのり

   〔約一字不明〕な勢ある青い葉を

   〔約一字不明〕朝からわたしは見てゐない

   霜害もなく蚕もとれて

   五月に土壌が乾いたとこへ

   陸羽一三二号のやうな

   〔約一字不明〕丈な稲が普及されてゐるので

   〔約二字不明〕稲作も大丈夫です

   〔約二字不明〕雲この雲

   〔約一字不明〕い虹をつくるこの雲の群

   これがわたくしのシャツであり

   これらがわたくしの呑みものである

   瘠せて青ざめ

   眼ばかり光って

   帰って来たのですが

   〔約二字不明〕わたくしは

   〔約二字不明〕たは麦わらのあの古い帽子をかぶり

   黄いろな木綿の寛衣をつけて

   南は二子の沖積地から

   飯豊太田湯口宮の目

   湯本と好地

   〔約一字不明〕幡矢沢と

   〔約一字不明〕はって行かう

   〔約一字不明〕るんで Colloidal な水に手をあらひ

   しかもつめたい秋の分子をふくんだ風に

   〔以下なし〕

 

 


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