〔眠らう眠らうとあせりながら〕

   

   眠らう眠らうとあせりながら

   つめたい汗と熱のまゝ

   時計は四時をさしてゐる

   

   わたくしはひとごとのやうに

   きのふの四時のわたくしを羨む

   あゝあのころは

   わたくしは汗も痛みも忘れ

   二十の軽い心躯にかへり

   セピヤいろした木立を縫って

   きれいな初冬の空気のなかを

   石切たちの一むれと

   大沢坂峠をのぼってゐた

 

 


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