〔みんな食事もすんだらしく〕

   

   みんな食事もすんだらしく

   また改めてごぼんごぼんとどらをたゝいたり

   樹にこだまさせて柏手をうったり

   林のなかはにぎやかになった

     ――ひでりや寒さやつぎつぎ襲ふ

       自然の半面とたゝかふほかに

       この人たちはいままで幾百年

       自分と闘ふことを教はり

       克明にそれをやってきた

       いまその第二をしばらくすてゝ

       形一そう瞭らかに

       烈しい威嚇や復讐をする

       新たな敵に進めといふ――

   あゝわたくしはこの樹を棄てて壇をのぼり

   施無畏の大士遠く去って

   うつろな拝殿のうすくらがり

   古くからの幡や絵馬の間に

   声あげて声あげて慟哭したい

   杉の梢を雲がすべり

   鳥居はひるの野原にひらく

 


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