発動機船 三

   

   石油の青いけむりとながれる火花のしたで

   つめたくなめらかな月あかりの水をのぞみ

   ちかづく港の灯の明滅を見まもりながら

   みんなわくわくふるえてゐる

      ……水面にあがる冬のかげらふ……

   もゝ引ばきの船長も

   いまは鉛のラッパを吹かず

   青じろい章魚をいっぱい盛った

   樽の間につっ立って

   やっぱりがたがたふるえてゐる

   うしろになった魹の崎の燈台と

   左にめぐる山山を

   やゝ口まげてすがめにながめ

   やっぱりがたがたふるえてゐる

      ……ぼんやりけぶる十字航燈……

   あゝ冴えわたる星座や水や

   また寒冷な陸風や

   もう測候所の信号燈や

   町のうしろの低い丘丘も見えてきた

      羅賀で乗ったその外套を遁がすなよ

 

 


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