石油の青いけむりとながれる火花のしたで
つめたくなめらかな月あかりの水をのぞみ
ちかづく港の灯の明滅を見まもりながら
みんなわくわくふるえてゐる
……水面にあがる冬のかげらふ……
もゝ引ばきの船長も
いまは鉛のラッパを吹かず
青じろい章魚をいっぱい盛った
樽の間につっ立って
やっぱりがたがたふるえてゐる
うしろになった魹の崎の燈台と
左にめぐる山山を
やゝ口まげてすがめにながめ
やっぱりがたがたふるえてゐる
……ぼんやりけぶる十字航燈……
あゝ冴えわたる星座や水や
また寒冷な陸風や
もう測候所の信号燈や
町のうしろの低い丘丘も見えてきた
羅賀で乗ったその外套を遁がすなよ