鮮人鼓して過ぐ

   

   肺炎になってから十日の間

   わたくしは昼もほとんど恍惚とねむってゐた

   さめては息もつきあえず

   わづかにからだをうごかすこともできなかったが

   つかれきったねむりのなかでは

   わたくしは自由にうごいてゐた

   まっしろに雪をかぶった

   巨きな山の岨みちを

   黄いろな三角の旗や

   鳥の毛をつけた槍をもって

   一列の軍隊がやってくる

 

 


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