鼓者

   

   ときにわれ胸をいたづき

   日もよるもゆめみなやみき

   そがなかにうつゝをわかず

   なが鼓の音街をよぎりし

   そのリズムいとたゞしくて

   なやみをもやゝにわすれき

 

   のき低きみちのさなかに

   崩れたる白き光や

   おぼろなる吹雪をあびて

   そのかみの高麗の軍楽

   人知らぬよきしらべして

   なれはかも過ぎ行きにけん

 

   わが病いまし怠り

   許されて新紙をとれば

   かの線の工事了りて

   あるものはみちにさらばひ

   あるものは火をはなつてふ

   いづちにかなれの去りけん

 

   チャルメラや銅鑼をともなひ

   黄の旄やほこをしたがへ

   雪ふかき山のはざまを

   進みけんなが祖父たちと

   いま白き飴をになひて

   異の邦をさまよふなれよ

 


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