一〇六二

     〔墓地をすっかり square にして〕

                       五、九、

   

   墓地をすっかり square にして

   古くからの馬頭観音はとりのけたし

   枝垂れの巨きな桜はきれいに伐ってしまった

   その崖下を昔からのけはしい山川が

   春は春らしくながれてゐる

   

   小林区が行ってしまってから

   苗圃は荒れた粟畑になり

   腐植も減ってあちこち茶いろにぶちてしまった

   針金製のインクラインが

   鼠いろの凝灰岩を吊して

   つぎつぎ川からのぼってくる

   

       日あたりの荒い岩かどを

       巡礼のこゝろもちで

       つゝましく

       西の温泉から帰ってくる

       百姓の家族たち

   

 


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