一〇五八

     〔銀のモナドのちらばる虚空〕

                  一九二七、五、九、

   

   銀のモナドのちらばる虚空

   すべて青らむ禁欲の天に立つ

   聖く清浄な春の樹の列

      みみづくの頭のかたちした鳥ヶ森の雪なかばとけ

      小くやさしい貴女たちのゆゑに

      雪やなぎひかれば

      すももの花のしたで

      黒衣の童子にまかれる燐酸もひかる

   

   雪と青い天とつらなる尾根が

   胆礬でもって染められたのだ

      こっちは田を鋤く馬と白いシャツ

   芽をださぬ栗の木の天蓋に

   無数におりるガラスの小鳥

      尾根いよよ青く惑む

   

 


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