一〇四五

     〔桃いろの〕

                  一九二七、四、二四、

   

   桃いろの

   アガーチナスな春より少しおくれて

   ぼんやりした黄いろの巨きな鳥がやってきた

   それはそこらのまだつめたい空間に

   光るペッパーの点々をふりまき

   またひとびとの粗暴なちからを盗みあつめて

   ちゃうど太陽に熟した黄金の棘ができるころ

   東の方へ飛んで行ったのだ

   さうして

   この歳はもうみんなには

   仕事のなかに芸術を感じ得る

   その力強さが喪はれてゐた

   

 


次の草稿形態へ→