一〇一七’

     〔水は黄いろにひろがって〕

   

   水は黄いろにひろがって

   いまはもう

   ほんものの土佐絵の波もたててゐる

   かたつむりの歩いたあとのやうにひかりながら

   島に残った松の草地と

   わたくしの白菜ばたけを浸さうとする

   いつの間にどうして行ったのか

   その新らしい恐ろしい磯に

   黒くうかんで誰か四五人立ってゐる

   忠一がいま吠えるやうに叫んで

   その巨きな黄いろな水に石をなげる

   

 


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