一〇一四

     〔山の向ふは濁ってくらく〕

                  一九二七、三、二三、

   

   山の向ふは濁ってくらく

   もう恐慌(パニック)が春といっしょにやってゐる

   

   野はらはまだらな磁製の雪と

   黝ぶり滑べる 夜見来川

   

     みんなに明るく希望に充ち

     わたくしに暗く重い仕事が

     そこでまもなく起らうとする

   

   鳥は電気や

   巨きな雲の尾を恐れない

   

 


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