このひどい雨のなかで
しづかに兎を飼ってゐる
いゝ兎なので
顔の銀いろなのもあり
めじろのやうになくのもある
そしてパチパチさゝげをたべる
けれどもこれも間に合はない
間に合はないと云ったところで
ああいふふうに若くて
頬もあかるく
髪もちゞれて黒いとなれば
べっかうゴムの長靴もはき
オリーヴいろの縮みのシャツも買って着る
そしてにがにがわらってゐる
かぐらのめんのやうなところがある
なにをやっても間にあはない
その親愛な仲間のひとりだ
くらく垂れた桑の林の向ふで
南のそらが灰いろにひかる
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