〔白菜はもう〕

   

   白菜はもう

   三分の一やられたよ、

     ……悪どい雲だ……

   鍬もながした

     ……大豆の葉が

       水のなかで銀いろにひかってゐる……

   おいおい封介

   どなって石をなげつけたって

     ……この温い黄いろな水だ……

   来るところまでは来るよ

     ……いくら封介が黒く肩を張ってどなったところで

       水の方は、

       雲から風からひとから地物から、

       すっかり連鎖になって、

       きまってしまった巨きなもんだし

       封介の方は、

       やっといまびっくりして、

       むらきにどなりだしただけだ

       続けて五分もおこれない

       だからもう

       かたつむりの痕のやうにひかりながら

       うしろからも水がひたしてくるのだ……

   

 


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