一〇五六

                  一九二七、五、七、

   

   ロシア帝政派の大将株が

   今日は息子と妻を使って陸稲(おかぼ)播きだ

     ……日が照って風と影……

   ロシア帝政派の大将株が

   麦稈帽子をあみだにかぶり

   黒いずぼんにわらじをはいて

   庇の下のつめたい影を

   大股にあるいて鳥を追ふ

     ……飛んで砕けるきららかな雲……

   ロシア帝政派の大将株が

   むすこがしばらく播く手をやめて

   ぼんやり楊の梢をながめ

   口をあくのを情けながって

   どなって石をなげつける

   

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→