春の雲に関するあいまいなる議論
一九二七、四、五、
あの黒雲が、
きみをぎくっとさせたとすれば
それは群集心理だな
この川すじの五十里に
麦のはたけをさくったり
桑を截ったりやってゐる
われらにひとしい幾万人が
いままで冬と戦って来た情熱を
うらがなしくもなつかしいおもひに変へ
なにかほのかなのぞみに変へれば
やり場所のないその瞳を
みなあの雲に投げてゐる
それだけでない
あのどんよりと暗いもの
温んだ水の懸垂体
あれこそ恋愛そのものなのだ
炭酸瓦斯の交流や
いかさまな春の感応
あれこそ恋愛そのものなのだ