春
一九二七、三、二三、
野原は残りのまだらな雪と
黝ぶり滑べる夜見来川
雲が淫らな尾を引いて
青々沈む波羅蜜山の、
松のあたまをかすめて越せば
山の向ふは濁ってくらく
二すじしろい光の棒と
わづかになまめく笹のいろ
野原はまだらな磁製の雪と
温んで滑べる夜見来川
←前の草稿形態へ
次の草稿形態へ→