白菜畑
霜がはたけの砂いっぱいで
エンタシスある柱の列は
みな水いろの影をひく
十いくつかのよるとひる
病んでもだえてゐた間
こんなつめたい空気のなかで
千の芝罘白菜は
はぢけるまでの砲弾になり
包頭連の七百は
立派なパンの形になった
早池峰ももう雪でまっしろ
川はつやつやひかりながら
不定な湯気をあげてゐる
燃えたり消えたりしつづけながら
かすかに鳴ってながれてゐる
病んでゐても
あるひは死んでしまっても
川がだまって流れてゐることは
なんといふいゝことだらう
あゝひっそりとしたこのはたけ
けれどもわたくしは
レアカーをひいて
この砂つちにはいってから
まだひとつの音もきいてゐないのは
ほんたうに音がないのだらうか
それとも聞えないのだらうか、
日の面を湯気のかたまりが通ってゐるので
砂はまたぼんやりくらくなってきた