七四一

     

                  一九二六、一〇、九、

   

   川上の

   練瓦工場の煙突から

   けむりが雲につゞいてゐる

   あの脚もとにひろがった

   青じろい頁岩の盤で

   尖って長いくるみの化石をさがしたり

   古いけものの足痕を

   うすら濁ってつぶやく水のなかからとったり

   二夏のあひだ

   実習のすんだ毎日の午后を

   生徒らとたのしくあそんで過ごしたのに

   いま山山は四方にくらく

   一ぺんすっかり破産した

   練瓦工場の煙突からは

   何をたいてゐるのか

   黒いけむりがどんどんたって

   そらいっぱいの雲にもまぎれ

   白金いろの天末も

   だんだん狭くちゞまって行く

   

 


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