秋

　　　　　　　　　　　　　　　　　　一九二六、九、二三、

　　　江釣子森の脚から一里

　　　荒さんで甘い乱積雲の風の底

　　　(一字不明)の林や赤い萓穂の波のなか

　　　そこにたくさん百姓たちが待ってゐる

　　　押し歩いたりわらったりして待ってゐる

　　　恐れた歳のとりいれ近く

　　　わたりの鳥はつぎつぎわたり

　　　野ばらの藪のガラスの実から

　　　風の刻んだりんだうの花

　　　今日わたくしはあすこで

　　　みずばせうの根を贈られる

　　　青じろいそばの花から

　　　蜂が終りの蜜を運べば

　　　まるめろの香とめぐるい風に

　　　江釣子森の脚から一里

　　　雨つぶ落ちる萓野のなかで

　　　百姓たちがけさわたくしを待ってゐる