七三四

     仕事

                  一九二六、八、二七、

   

   青いけむりで唐黍を焼き

   塩漬けのトマトも皿に盛って

   若杉のほずゑの chrysocolla も見れば

   たのしくしづかな朝餐な筈を

   こんなにわたくしの落ち着かないのは

   昨日馬車から坂のところへ投げ出した

   廐肥のことが胸いっぱいにあるためだ

   甲田加吉がすっかり内地でしくじって

   からだひとつでブラジルへ行く日

   なげなしの財布で

   国の芝居をもう一度見た

   エナメルの雲

   午后は雨だらう

   

 


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