七一八

     蛇踊

                  一九二六、六、二〇、

   

   この萌えだした柳の枝で

   すこしあたまを叩いてやらう

   叩かれてぞろぞろまはる

   はなはだ艶で無器用だ

   がらがら蛇でもない癖に

   しっぽをざらざら鳴らすのは

   それ響尾蛇に非るも

   蛇はその尾を鳴らすめり

   青い

   青い

   紋も青くて立派だし

   りっぱな節奏(リズム)もある

   さう そのポーズ

   いまの主題は

   「白びかりある攻勢」とでもいふのだらう

   しまひにうすい桃いろの

   口を大きく開くのが

   役者のこわさ半分に

   所謂見栄を切るのにあたる

   もすこしぴちゃぴちゃ叩いてやらう

   今日は廐肥をいぢるので

   蛇にも手などを出すわけだ

   けれども蛇よ、

   どうも、おまへにからかってると

   酸っぱいトマトをたべてるやうだ

   おまへの方で遁げるのか

   それではひとつわたしも遁げる

  

 


   ←前の草稿形態へ