七一四

     疲労

                  一九二六、六、一八、

   

   南の風も酸っぱいし

   穂麦も青くひかって痛い

   それだのに

   崖の上には

   わざわざ今日の晴天を、

   西の山根から出て来たといふ

   黒い巨きな立像が

   眉間にルビーか何かをはめて

   三っつも立って待ってゐる

   疲れを知らないあゝいふ風な三人と

   せいいっぱいのせりふをやりとりするために

   あの雲にでも手をあてゝ

   電気をとってやらうかな

   


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