いまはかすかなけむりとも
見やうとおもった盛岡が
すぐこのみちのまっしたを
巨きく青くひろがって
アークライトの点綴や
また町なみの氷燈の列、つめたいあかつきのかげらふのなかに
ふく郁としてねむってゐる
まことにここらのなほ雪を置くさびしい朝
風の粒子は高原のはてに遠くひしめき
月は崇厳な水銀に凍って
はなやかな錫いろのそらにかかれば
西ぞらの白い横雲の上には
ほろびた古い山彙の像が
ねずみいろしてねむたくうかび
ふたゝび老いる北上川が
あるかなしかに青じろくわたる月の香気を
しづかにうけてながれて行く
……汒びる最後の極楽鳥が
尾羽をひろげて息づくやうに
まちはふたたびひるがへる……
やぶうぐひすがなきはじめ、なきはじめてはしきりになき、
残りの雪があえかにひかる